第一、今回の日露戰爭に勝利を得た所以を

 第一、今回の日露戰爭に勝利を得た所以を考へて見ても分る。それに就いては、一つ滑稽な話がある――或陋劣な日本人の耶蘇教師が二名、今度、わざ/\アメリカ傳道會社の依囑を受けて、印度へ講演をしに行つたが、その目的は、日本の勝利を得たのは决して非耶蘇教の力ではないといふことを説明するにあるのだ。詳しく云へば、日本主義とか、武士道とか、祖先崇拜とか、佛教儒教とか云ふものが勝利の原因でないから、印度人等も之が爲めに輕々しく耶蘇教を疎んじてはならないと教へる必要が、印度の傳道者仲間に生じたのだ。それで、二名の渡航者は、さま/″\考案したあげくが、耶蘇教と衝突のない科學的研究の應用が甘く行つたことを非常な條件にしたさうである。これは笑ふべき窮策としても、一小條件にはなるだらう。木村氏の如きは『日本主義』の活現だと云ひ、また他の人々は『武士道』の影響だと云ふ。また、片山氏の如きは、『靈魂と國家』(帝國文學)に於て、靈魂が『因果の法則より脱がれて、絶對の自由と獨立とを得むとする努力』の然らしめたところだと云はれた。然し、僕は僕の説から、半獸主義の實現を以つて、諸氏の説明を抱含してしまいたい。

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