そのとき、竹見がふと気がついたのは、平靖号の船腹に、一隻のボートが、大きくゆれながら、繋留していることだった。そのボートには、不似合いな大きなはたが、はためいていた。
(おお、あれは軍艦旗のようだ!)
竹見は、どきんとした。いやなところを、船長ノルマンはうつしたものだ。これはどうやら、平靖号が、岸少尉の指揮する臨検隊を迎えたときの光景ではあるまいか。なぜノルマンは、こんなところを、映画にとっておいたのか、ふしぎでならない。
すると、画面は一変して、甲板の大うつしとなった。また更に倍率の大きいレンズを、つぎ足したものとみえる。
甲板に整列している乗組員は、いずれも見覚えのある同志ばかりだった。両脚のない虎船長が、船員にかかえられて甲板に姿をあらわした。すると、画面に岸少尉が出てきた。つかつかと虎船長のところへ寄ると、しっかと握手をして、つよくふった。感激に虎船長の顔が歪んだようになるところまでが、いやにはっきり画面に出てきた。