停電じゃない

「停電じゃない。今まで受けていたテレビジョンの電波が停ってしまったんだ。じゃ別の電波に合わせてみよう」
 局長は目盛盤をうごかして、ちがった映像を映写幕の上にうつし出した。それはずっと後方に位置する送影機からのものらしく、怪人集団の城塞はずっと小さくなって見えた。その代りに、鋼条で吊り下げられた籠のような形の送影機が五つも六つも見えた。
 と、画面が突然ぱっと眩しく光った。
「あ痛ッ」
 ドレゴが叫んだ。
「どうした、ドレゴ君」
 局長がドレゴを背後から抱えた。するとドレゴが、わははと笑い出した。
「どこだ。痛いといったではないか」
「わははは。幕の上でぱっと光ったので、僕は手榴弾かなんかを投げつけられたような気がしたんだ。わははは、神経だよ、全く神経のせいだ」
「人騒がせな男だね」局長はドレゴの身体から手を放して、肩をすぼめた。が、彼はこのとき幕面へ目をやるが早いか、ドレゴが先に発したよりも大きな声で叫んだ。
「あッ、やられた。このへんにぶら下っていたテレビジョンの籠がやられてしまった」
 そういっているとき、また、ぱぱッぱぱッと幕上の相ついで閃光が二人の目を射た。

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