その大利根博士が、軍艦淡路をおとずれたのは、約束より三日もあとのことでありました。
「やあ、ひどいことになったものですね」
博士は腰をたたきながら、にこにこ顔で舷梯をのぼって来ました。
艦長相馬大佐をはじめ、幕僚たちや検察隊長の塩田大尉なども、大利根博士を出迎えていました。
「これは相当の威力をもっている秘密兵器でやられたのですね。たいへん面白い。すぐにしらべてみましょう」
と、甲板のうえから、艦橋が飴細工のように曲っているのを見上げて、しきりに首をふって感心していました。
「大利根博士、お茶をめしあがれ」
ミチ子が水兵さんに代って、紅茶をすすめました。
「やあ――」と博士は目をまるくして、「おや、このごろは軍艦では、女の給仕をつかうようになったんですか。あっはっはっ」
ミチ子は、顔をあかくしました。