すさまじく憤怒の色をあらわし、なかなか芝居に骨がおれる丸本は、竹見の手首を縛った麻紐を、ぐっと手元へ二度三度手繰った。
すると竹見の身体は、とんとんと前へとびだして、つんのめりそうになった。
「うん、野郎!」
ハルクが、たくましい腕をのばして、横合から麻紐をぐっと引いた。
とたんに、麻紐が、ぷつんと切れた。
「あっ」
「うーむ」
丸本も竹見も、前と後のちがいはあるが、ともにどっと尻餅をついて、ひっくりかえった。巨人ハルクさえが、あやうく足をさらわれそうになった。――麻紐は、なぜ切れたのか。それは丸本の早業だった。手ぐるとみせて、彼は手にしでいたナイフで、麻紐をぷつんと切断したのであった。