巨人ハルクは、ゴリラの如く、いかった。
「な、生意気な! もう勘弁がならないぞ!」
と、大木のような両腕をまくりあげて、じりじりと前へ出てくる。
これを見て、おどろいたのは、丸本よりも平靖号の事務長だった。いや、事務長ばかりでない。その後につきしたがう平靖号の乗組員たちであった。いよいよこれは、ものすごい乱闘になるぞ、そうなると、最早生きて本船へかえれないかもしれないと、顔色がかわった。
丸本も、立ち上って、今はこれまでと、みがまえた。
巨人ハルク、その後に水夫竹見、そのまた後に、ノーマ号のあらくれ船員どもがずらりと、一くせ二くせもある赤面が並んで、前へおしだしてくる。ノーマ号の甲板上に、今や乱闘の幕は切っておとされようとしている。
甲板のうえは、たちまち鼻血で真赤に染まろうとしている。こうなっては、どっちも引くに引かれぬ男の意地、さてもものすごい光景とはなった。