「ときにAさん。」
「なんだいBさん。」
「十年経ったら、ラジオ界はどうなる?」
「しれたことサ。ラジオ界なんてえものは、無くなるにきまってる。」
「へえ、なくなるかい。――今は随分流行ってるようだがネ。無くなるとは、ヤレ可哀相に……。」
「お前は気が早い。くやみを言うにゃ、当らないよ。僕はラジオ界がなくなると言ったが、『ラジオ』までが無くなるとは、言いやしない。」
「ややっこしいネ、Aさん。そんなことが有り得るものかい。」
「勿論サ、Bさん。人間の生活に於ける水や火のように、これからの世の中は、ラジオがすべての方面の生活手段に、必需的なものとなってゆくのだ。『ラジオ界』などという小さい城壁にたてこもることが許されなくなる。一にもラジオ、二にもラジオで、結局、世界はラジオ漬けになるであろうよ。」