「ビールだ。で、君の名前は?」
「マリ子って、いうわ、どうぞよろしく」
イートン・クロップのお河童頭がよく似合う子だった。前髪が、切長の涼しい眼とスレスレのところまで垂れていた。なによりも可愛いのは、その、発育しきらないような頤だった。
「おいマリちゃん」すかさず帆村が、彼女の名を呼んだ。「ここ、特別室があるんだろう。地下室か、なんかに、そこへ案内しろよ」
「地下室なんて、ないわよ。この三階がスペシャルなんじゃないの、ホホッ」
と、やりかえして、マリ子は下へ降りていった。
煙草の箱を探そうと思ってポケットへつきこんだ指先に、カチリと硬い物が当ったので、私は思いだした。