そして木部あての手紙には、
「定子はあなたの子です。その顔を一目御覧になったらすぐおわかりになります。わたしは今まで意地からも定子はわたし一人の子でわたし一人のものとするつもりでいました。けれどもわたしが世にないものとなった今は、あなたはもうわたしの罪を許してくださるかとも思います。せめては定子を受け入れてくださいましょう。
葉子の死んだ後
あわれなる定子のママより
定子のおとう様へ」
と書いた。涙は巻紙の上にとめどなく落ちて字をにじました。東京に帰ったらためて置いた預金の全部を引き出してそれを為替にして同封するために封を閉じなかった。
最後の犠牲……今までとつおいつ捨て兼ねていた最愛のものを最後の犠牲にしてみたら、たぶんは倉地の心がもう一度自分に戻って来るかもしれない。葉子は荒神に最愛のものを生牲として願いをきいてもらおうとする太古の人のような必死な心になっていた。それは胸を張り裂くような犠牲だった。葉子は自分の目からも英雄的に見えるこの決心に感激してまた新しく泣きくずれた。自動車 買取 サービス > 自動車、オートバイ > 査定、買取 – Yahoo!カテゴリ