きっとここには何かあるはずだ

「いや、きっとここには何かあるはずだ」
 そのことばが終るか終らぬうちだった。
「あなたがたはどこまで行くのですか」
 どこからともなく、ひくい声が聞えて来たのである。
「谷博士のところへ行きたいんだ」
 戸山少年は、どきょうをきめて、元気よく答えた。
「それでは戸をしめてください。ここをしめてもらわないと、私は動けませんよ」
 だれが話しているかは知れないが、人間のものとは思われなかった。
 ここまで来てひっかえしては、かえって怪しまれることになる。だがまぐれあたりで、壁の扉はひらいたものの、扉をしめる合言葉までは知らないのだった。だが、「ひらけゴマ」ということばで扉がひらいたのだから、あのアラビアンナイトの中の文句どおりに、「とじよゴマ」といって見たらどうだろう。

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