正面からも、又は背景としても、殆ど描かれずに終つてしまつた

要するに一切の事になぐさまぬ心がその原因をなしてゐるのであらう。

そのなぐさまぬ心、その爲に世を捨鉢の氣まぐれともなる心持は、「青い帽子」及び「假裝」の中に共に現れる二人の女にも見出される。この二人の女は不愉快な新聞語を以て呼べば、所謂新しい女であらう。自分のやうな、女性に對しては、自分自身の主我的な要求から、寧ろ古めかしい優しさを強要する傾向の者には、反感を持たないではゐられない種類の女である。勿論茲に新しい女とは、新聞記者の理解する丈の意味に於ての新しい女で、決してよき意味に於ける進歩した女を意味するのでは無い。殊にこの二人、即ちかし子とつね子とは、決してその思想に於て新しい女ではなく、ただ單に行爲の上に、慣習を破壞したあばずれが現れてゐる際の女なのである。兎に角今此の小説の中では、二人は何か心も躍るやうな刺戟に憧れ惱んでゐる事は確かである。

歯科 ホームページ作成 名を竹帛に垂る

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