予は現に帝國大學の法科の學生の間に

予は現に帝國大學の法科の學生の間に、主としてこの事件の影響と認むべき事情の下に、一の秘密の社會主義研究會が起つたことを知つてゐる。また嘗て予を訪ねて來た一人の外國語學校生徒の、學生の多くが心ひそかに幸徳に對して深い同情をもつてゐることを指摘し、「幸徳の死は最も有力なる傳道であつた」と言つたのを聞いた。また或る日、本郷三丁目から須田町までの電車の中に於て、二人の大學生――二人共和服を着てゐたから何科の學生であるかは解らなかつたが――が、恰度予と向ひ合つて腰かけて、聲高に、元氣よくこの事件について語るのを聞いた。話は電車に乘らぬ前からの續きらしかつた。車掌に鋏を入れさせた囘數切符を袂に捻じ込むや否や、小柄な、嚴しい顏をした一人が、その持前らしい鋭い語調で、『第一、君、日本の裁判官なんて幸徳より學問が無いんだからなあ。それでゐて裁判するなどは滑稽さ。そこへ持つて來て政府が干渉して、この機會に彼等を全く撲滅しようといふやうな方針でやつたとすれば、もう君、裁判とは言はれんぢやないか』被リンク RealPlayer 動画検索 | 動画検索エンジンを選べる動画検索サービス

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