その燃える火の中にお立ちになっていた、あの危急なときにも、命は私のことをご心配くだすって、いろいろに慰め問うてくだすった、ほんとに、お情け深い方よと、そのもったいないお心持を忘れない印に歌ったのでした。
命はそこから、なおどんどんお進みになって、いたるところで手におえない悪者どもをご平定になり、山や川の荒くれ神をもお従えになりました。 それでいよいよ、再び大和へおかえりになることになりました。 そのお途中で、足柄山の坂の下で、お食事をなすっておいでになりますと、その坂の神が、白いしかに姿をかえて現われて、命を見つめてつっ立っておりました。 命は、それをご覧になると、お食べ残しのにらの切はしをお取りになって、そのしかをめがけてお投げつけになりました。すると、それがちょうど目にあたって、しかはばたりと倒れてしまいました。