ふくら脛のすこし上のところに

 ふくら脛のすこし上のところに、まだ一度も陽の光に当ったことがないようなむっつり白い肉塊があって、象牙に彫りきざんだような可愛い筋が二三本匍っていた。だがその上を一寸ばかりあがった膝頭の裏側をすこし内股の方へ廻ったと思われるところに、紫とも藍ともつかない記号のようなものがチラリと見えたのは何であろう。見極めようとした途端に、ひとでのような彼女の五本の指が降りて来て僕の視線の侵入するのを妨げてしまった。僕は何故か階段に踏み止った婦人の心を読むために、はじめて眼をあげて彼女の顔をみあげた。おお、これは又、なんという麗人であろう。花心のような唇、豊かな頬、かすかに上気した眼のふち、そのパッチリしたうるおいのある彼女の両の眼は、階段のはるか下の方に向いていて動かない。その眼には、なにか激しい感情を語っている光がある。で、私は彼女の眸についてその行方を探ってみた。だがそこには長身の友江田先生の外になにものも見当らなかった。僕はしばらく尚も遠方へ眼をやったが矢張り何者もうつらなかった。そのときハッと或ることに気付いて友江田先生の顔を注目したのであるが、「もう時間だ。やめよう」
 と先生が俄かにこっちを見て叫んだ。

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