なアに、一枚だけだ

「なアに、一枚だけだ。これでいいよ。あとは捨てろ。この屑山を直ぐ捨てて来い」
 そういうなり私は、柿色の花びらを一枚束の中に加えた。一枚ぐらい余分に加わっても別に作業に不都合はなかった。
 それが済むと、私は自分の作業台のところへ帰って来た。そこには五十嵐が何喰わぬ顔で待っていた。
 作業は始まった。
 私は柿色の花びらのついた紙風船が、もう来るか来るかと、首を長くして待った。
(あ、来たぞ)柿色の紙風船は、遂に私たちの方に廻って来た。五十嵐は無造作に二つに折って、バサリと球の上に被せた。
「やあ」ポーン。
 と私は丸い風船の尻あてを貼りつけた。だがそこに千番に一番のかねあい……というほどでもないが、糊のついたところに例の裸のラジウムをくっつけるが早いか、その方を下にしてポーンと柿色の紙風船に貼りつけたのであった、つまり鉛筆の芯の折れほどのラジウムは、紙風船の花びらと尻あてとの紙の間に巧みに貼り込まれてしまったのだった。
「いやァ。――」ポン。

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