艦には、ふしぎにも、水兵一人居らなかった

 艦には、ふしぎにも、水兵一人居らなかった。そしてぷんぷんとゴムくさかった。
「一言にしていえば、つまりこの艦は、艦体を厚いゴムで包んだものと思えばよろしい」
 と、博士はひどく気のなさそうな声でもって説明を始めた。
「しかし本当は、もっと複雑な構造をもっているんだ。今それをお目にかけよう。さあ、両傍へ分れてください」
 そういうと、金博士は車のついた大きな電気メスをもちだして、甲板に当てた。すると甲板は火花を散らし、黒い煙をたてながら、まるで庖丁でカステラを切るように剪れた。博士はメスを置いて、こんどは高圧ブラストで、甲板の破片を海中へ吹きとばした。すると甲板の大きく切られた断面が人々の目の前に現れた。
「これ御覧。すてきに厚い最良質のゴムの蒲団みたいなものじゃ。爆弾が上から落ちる。するとゴムの蒲団にもぐる。その間に爆弾の方向が鋼鉄の艦体に平行に曲る。そしてそのまま走るから、鋼鉄の艦体の外側をぐるっと廻って艦底に出て、そこでゴム底を突き破って、爆弾は水中へどぼんと通り抜ける。な、分るでしょうがな」
 金博士は、大統領の顔を見る。大統領は大きく肯き、傍にいる建艦委員の誰かの腕をつかんでゆすぶり、
「おい、君たちにも分るだろうな。よく覚えておくんだぞ。後でこのとおり作るのだから……」

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