しかし僕は

 しかし僕は、僕の今までの成行として、これもかつて計画はあった、支那の先生達の世話をするのがもっとも確実な、もっとも安全な、もっとも容易なことではないかと思う。すでに十分の信用はある、十分の同情はある、さらに僕も語学や何かを教えるという実利を加えれば、ほとんど申し分がない。少ししっかりした女中が居れば、足下にもさほど骨の折れることでもない。もしできるなら、僕の出獄後、すぐにこの業を少し大仕掛けにしてやって見たい。また、出版の方も、多少支那と関係のあるものをやって見たいと思う。
 以上は足下を主とし、僕を客としての仕事だ。
 僕は、前に言った雑誌が出せるなら、まずこの編集をやりたい。雑誌は『研究』くらいの大きさで、科学と文芸とを兼ねた高等雑誌にしたい。世の中は大ぶ真面目になって来た。真の知識、真の趣味の要求が、はなはだ盛んになっている。僕等が、実際の思想よりも数歩引き下がれば、ちょうどこの要求にもっともよく応ずるものになる。文学も多少僕等の時代に近づいて来た。僕等の思想なり僕等の筆致なりにシックリ合うアナトール・フランスなどいう連中が、大分もてはやされて来た。もし雑誌が出せぬとしても、僕はこの方面において大いに僕の語学力を発揮して、(三字削除)としての以外に旗上げをするつもりだ。

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